初恋、はじめました。
《彼の正体》
注ぐ木漏れ日がその姿をキラキラと照らし出す。
柔らかな風がその残像を揺らす。
「……………」
「……あんた、めっちゃ怖いよ」
放課後の誰もいなくなった教室。
他の教室にも人はほとんど残っていないのか、辺りは随分と静まり返っている。
陽射しが照りつけるその教室の窓から、円香はじーっと外の光景を眺めていた。
ほとんど瞬きすらせず無言で。ついでに言うなら無表情で。
端から見れば黄昏ているようでありながらも中々に異様な光景である。
とはいえ本人は至って普通のつもりなのだが。
どうも彼女は何かに集中したり考え事をしたりすると無表情になりやすいらしい。
彼女の席は教室の窓側の後ろから二番目という特等席である。
しかもここは二階。