初恋、はじめました。
そんな場所から窓越しに円香が見つめている景色の先にいるのは、中庭で戯れている数人の男女のグループ。
それはそこにいるだけで目立つような存在だが、彼女の視線はその中でも一際目立っている一人の男子生徒だけに注がれている。
その輪の中心にいる、綺麗なミルクティー色の髪を揺らす男に。
その男だけが円香にとってその絵の主役だった。
「…今日も素敵に綺麗だよね」
ポツリと教室に落ちた円香の声。
それは声にしてもしなくてもよかった言葉だったが、円香の口は心に正直に震えそれを音にする。
小さく呟かれたその言葉に円香の横で頬杖を付きながら椅子に横向きに座っていた友人である神崎仁菜(ニイナ)は眉を寄せて、深く深く溜め息を吐いた。
そして同時に円香に向けられる呆れたような視線。