初恋、はじめました。
《コンビニの彼》
「うーん…どっちにしたらいいんだろう…」
コンビニの飲み物売り場の前でうんうんと唸っている一人の少女。名前を東条円香という。清徳西高の二年生である。
そんな彼女はもうかれこれ十数分その場から動いていない。
彼女の視線を辿れば、その視界に入っているのはパックに入った二種類のカフェオレ。
値段もサイズも同じ二つのそれに、彼女は胸元にまで伸びた二つに結んである黒髪の毛先を片手で弄りながら大きく顔をしかめた。
(どっちにするべきか…右の方が美味しそうな気もするけど、左の方がカロリーが…んんんんん…)
もう何度目かわからない同じような考えに、もはや円香も自分が何を考えているのかもよくわかっていない。
そもそも何故同じ飲み物を二種類も売っているんだ、と彼女は思う。