初恋、はじめました。
販売会社が違うのだから仕方ないことなのだが、そんな大人の事情など円香には関係がない。
その二つのせいで円香は使わなくてもいい余計な時間を使うはめになっているのだから。
友人たちからも断言されるほど自他ともに認める優柔不断な性格の円香にとって、選択肢が多いというのはあまり嬉しい状況ではなかった。
「むぅ…」
結局どちらにするか決めることが出来ず、再びカフェオレと向き合うことになった円香。
先程から店員がチラチラと視線を投げてきているのには気付いているが、それが円香を焦らせ更に決定を遅らせている。
(ひいいい。ごめんなさいいい!!)
もういっそどっちも買ってしまおうか。
そう思った時。
ふわりと、なにか円香の鼻を掠めたいい香り。