本世界
 「あ!戻る前に言っておかないといけない事があるの。」



 「何?ナキ。」



 「本の中に入ったら最後まで話を進めないと、どれだけ力を込めて息を吹きかけても光は現れないの。だから、何が何でも最後まで進めないといけないから気をつけて。」



 「わかった!ありがとう。またこの世界にも遊びにくるよ!」



 フッ



 一瞬ナキが笑った。それはまるで妖精のように静かでやわらかい笑みだった。



 (綺麗だ…。)



 「ありがとう。」



 「え!あ!!…。」



 (やっぱり心読まれるって恥ずかしい…。)



 「そんなこと思ってるなら読まれないようさっさと帰ったら?」



 「そ、そうさせてもらうよ。」



 ナキの姿を目に焼き付けて、右手を口へと近づける。



 「じゃあね!いろいろとありがとう、ナキ。」



 「授けた能力、ちゃんと使ってよ?じゃ。」



 光を口の中へ入れた。何かが口に入っているという感覚はないが舌がヒリヒリする。そして、覚悟して飲み込んだ。



 (ん…。めまいが…気が遠くなって…。)
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