本世界
 「図書カード持ってないし、つくろうとしたとしても、気づいたら閉館時間だったし。」



 「そう。はい!じゃあ夕飯だから早く手を洗って席について!」



 母さんがドンっと僕の背中をおす。僕は席について夕飯を食べた。



 自分の部屋に戻ると、いろんな本が気になり始めて、小さい頃よく読んでいた数冊の本を押し入れから出した。
 その数冊の中で最も好きだったのは『ヘンゼルとグレーテル』だった。迷子になったヘンゼルとグレーテルが道をさまよっているとお菓子の家を見つけるという話だ。



 (懐かしいなあ…。今じゃ読むことがなかったから凄く久しぶり。)



 パラッ



 無意識に表紙をめくってしまった。



 「あ…。」



 そうして僕はまた、眠りについてしまった。
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