名前で呼ばないで
現れた王子様
翌日の放課後。
帰ろうとした私に玄関の下駄箱のところで待っていた、昨日の女子に呼び止められた。
半強制だった部活には目ぼしいものもなく入っていなかった。
「あのっ」
「はい」
「矢水くん、好きな人がいるって本当なんですか??」
「いや、知りませんけど??」
「あなたじゃないんですか!?」
「はい!?」
かなりお怒りな様子で。
「とぼけないで!!あなたを追いかけて、あなたと同じ学校に入りたかったって噂も聞いたんだから!!」
そんなこと言われても。
嫌いなものは嫌いだし。
好き嫌いははっきりしている方だった。
人参とピーマンと同じくらい、矢水が嫌いだ。
「悔しい!!」
ついには、わっと泣き出し、走ってどこかに行ってしまった。
ぽかんとするしかなかった。