名前で呼ばないで
「結婚してください!!」
朝の通学時間。
私、芋祓豊子(イモハライトヨコ)は、いつもの日課で通りすがりの男子にプロポーズする。
「えっ!?いや、ごめん…」
怪しい子だ、と戸惑い、苦笑いで逃げる男子。
当然の反応だ。
相手のことは何も知らない。
なので、ラブレターもない。
中1で、プロポーズの重みなど知るよしもない。
いや、別の意味で切実だ。
「恥ずかしいからやめなさい」
同じアパートに住むクラスメイトの葉山華澄(ハヤマカスミ)に注意されるのも毎日のこと。
「華澄はいいよねえ~可愛いお名前で」
「いいでしょう」
それすらもいつものやりとり。
最初は戸惑い、ウザがった彼女も、あしらってくれるようになった。