名前で呼ばないで
結局、本当に風邪らしく熱が出て、1週間休んだ私。
夏休みのショックが尾を引いていたのかも知れない。
それに加えて白鳥先生だ。優しい手の感触が、忘れられない。
「豊子、お友達来たわよ」
「えっ??誰?」
「こんにちは、大丈夫??」
「だいぶ良さそうやな」
言って、ドアの隙間から顔を見せたのは花子さんとふて腐れた矢水だった。
「移すといけないから」
一応マスクはしておいた。
「あっ、うん、ここで帰るね。これ、ノート渡しに来ただけだから」
学校帰り、休みの間の授業のノートを取って持ってきてくれたみたいだ。
「わざわざ、ありがとう」
と、花子さんをよく見ると、顎の辺りがすっきりと痩せ始めているのがわかった。
頑張ってるんだ、矢水のために。
妙にチクリとした。