名前で呼ばないで
「なるって??何に??悪代官??」
「あほか!………その……なんや」
「王子様になりたいそうですよ?」
「お!!お前が先、言うな!!」
耳まで赤くなる矢水。
「婿養子、前提だけど」
無理に決まってるし、と言うだけ言ってみる。
「そうなんですか??」
「父が実家の跡取りで、婿養子を取らないといけないらしいんです」
ふっ、と笑うと、
「よっぽどお父様に愛されてるんですね。たぶん嘘ですよその話」
「え"っ?!」
「よほど先祖代々続く、お商売か何かの家柄でない限り、強制で婿養子というのは考えがたいですね」
騙された。
じゃあ名前、変えれるんじゃん。
「だ、だからって矢水は嫌ですけど」
「では、白鳥になりますか??」
「しれっと冗談キツイです」
少し前なら嬉しすぎて鼻血吹いて卒倒してたな。
ごほん!!と咳払いすると、
「とにかく!!今度、どっか行けへんか!?」
「却下。仲いいと思われたら困る」
「じ、じゃあ、豊子って、呼んでええか??」
呼びたかったのかよ。
「もういいよ。イモコでも豊子でも」
諦めた。
もう気にするのが馬鹿馬鹿しくなっていた。
いい名前じゃないか。
遠い将来は、名前に負けてない、可愛いお婆ちゃんになろう。
「それはええんかい!!」