モアイ・ザ・ババリアンの涙
電車
電車に乗ると、モワーっとした。

人の匂いか、傘の匂いか、はたまた人が傘に濡れた匂いか。

まるで僕たちは、移送されていくかつての帰還兵かユダヤ人のようで、みな一様に身を寄せ合い、下を向いている。

そうか、僕たちは負けたんだ。

こうしている時が、何よりもその事を実感させてくれる。

10人なら10人の、100人なら100人分の敗北。

電車はそれを取り込んで動いて行く悪魔。
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