アイアンロストゼウス
間違いないはず・・・
僕の記憶が正しければ今朝の新しく着任したパイロットの女の子だ・・・
庵「・・・1118・・・月神・・・」
呼称しながら目的地に向かい長い通路を歩いていたときだ。
『―ビー!!ビーーーッ!!』
庵「Σ!?」
『警告警告!敵艦隊レーダー上に確認!!ゼウスパイロット並び施設内職員は至急各自持ち場に配置されたし!
繰り返す!!ーッ!!』
館内全域に警報が鳴り響く。
庵「警報!?・・・」
久しぶりの大きな警告音にビックリした杉浦だが慌てていても仕方ない。
それにまだ避難勧告出はなく警告なのだ。
取り敢えずまだ避難勧告は流れていないので逃げるわけにはいかない、何より今は勤務時間内だからなのか、変なプライドが働きかける。
それに一昔前はこんなの日常茶飯にあって
今更感と言うべきか緊張感は等に失せていた。
庵「・・・ゥシッ!!」
人知れず気合いを入れるとまだなりやまぬ警報がこだまする通路を駆けていった。
目的地につく頃はもう主要な大きな通路は忙しそうに行き交う人間で溢れかえっていて、その間を掻い潜りながら何の気にもとめず涼しい顔で歩いている杉浦だが時々商売道具の入った袋を握る手に力がはいり内心少し不安な様子が垣間見えた。
それから数分後何とかパイロット専用寮内にある1118号室の前にたどり着いた。
ノックをし扉を開けようとした瞬間ほぼ同時に一人の女の子が飛び出してきた。
破月「―!!」
庵「Σ!?」
破月「・・・ごめん!大丈夫?あっ!設備の人?ちょっと私仕事あるから適当に中入っててください!!じゃっ!」
庵「えっ!?・・・・・・ッ!?」
あのまま突っ立ってたら開いた扉に顔面パンチをくらわされるところを間一髪後ろに避けて回避したのは良いが、肝心の月神は早口で話すとそのまま勝手に話して勝手に終わらせたかと思うと一目散にその場から走り去っていった。
庵「・・・」
何と言うか・・・初めて見た時や月神の見た目からは想像越えた慌てように目を丸くする。
庵「呼んどいて何なんだこの人は・・・」
そんな事より仕事をしなくてはと、切り替えの早く杉浦はそそくさと言われた通り部屋の中に入っていった。
破月「・・・ハァ・・・ハァ・・・ッ!!」
部屋の中は質素なものだ。
それもその筈だ。
バスルームに向かおうとしたときだ、ふとベッドの脇の写真に視線が行く。そこには先程の女の子と良く似た少年が写っていた。
庵「・・・(きょうだいの写真かな?・・・そんな事より仕事しなくちゃな・・・)」
庵「ここか・・・(・・・随分空き部屋だったからかな?水道管が錆びて穴が開いてる・・・)」
ごそごそと道具を取り出して手慣れたように修理していく。完璧だ!!と言わんばかりの満足げな顔を浮かべると杉浦は道具を片付けて足早に部屋を後にした。