私たちの好きな人
私の彼
周りにたくさんの女の子がいることは知っていた。
それでも当時、彼には付き合っている子はいなかったし、もうあと一年しか一緒にいられないと思うといてもたってもいられず、気づけば彼に告白していた。
なんて言ったのか、何時頃でどこでだったかとか、とにかくその時のことをよく覚えていない。
それほど私はいっぱいいっぱいだった。
次の日の朝、携帯を開くと彼から「これからよろしくね」とのメッセージが送られていた。 まだ事態を呑み込めていない私は何て返したらいいのかわからなかったので無視した。
とりあえず学校に行って教室に入ると、先に来ていた彼と目が合った。
瞬間、私は思いきり目を伏せた。
どうしよう。昨日のことが思い出せない。
思い出せたとしても思い出したくないけれど。
やっちまった感が半端ない。
昨日の私は本当にどうかしていた。
告白だなんて、本当に馬鹿なことを……。
徐々に恥ずかしさが込み上げてくる。
「これからよろしくね」の意味が分からないよ。
友達として?それとも……。
「おはよう」
ぐるぐる考えを巡らせているときに急に声をかけられ驚いた私はビクッと肩をあげた。
しかも今一番聞きたくない声かもしれない。
全身に力が入る。
入口で硬直している私に、彼___島崎湊が私の顔をのぞきこんでいた。
「……えっ、どうかした?大丈夫?」
昨日のことといい距離感といい、シチュエーション的には緊張しまくりなのだが、島崎湊の声は本当に私を心配しているようで、少し肩の力が抜け、自然と
「あ、あの……島崎君……」
と近距離でも聞こえるかあやしい声で言った。
ああ、何を言えばいいのだろう。
ていうか、何で話しかけてくるんだろう。いや、昨日のことだろうけど……!
再び緊張してきた私に、彼は思いもよらないことを口にした。
「島崎君なんて、よそよそしいなあ。湊って呼んで。俺も利那って呼ぶから」
私は驚いて顔をあげた。彼は笑顔でこう言った。
「俺たち昨日から付き合ってんじゃん。昨日の利那、すげー可愛かった……って、えっ、うわ!?利那?」
多分私、今、顔から火が出てる。
彼が私の肩を揺する。
だめ……今、触らないで。
嬉しさと恥ずかしさとよくわからない感情で、その場に崩れ落ちた。
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