私たちの好きな人
2
完全に終わったと思った。
けれど、何も終わらなかった。
湊は相変わらずだし、私も湊への思いが変わることは無かった。
ありえないことされているのに、私の思いは変わらないなんて。
バカだよ。
自分にほとほと呆れる。
けど、それはまだ付き合って日が浅いせいかもしれない。
今はちょうど恋心が昂っているいる時期だから。
ベッドでゴロゴロしていると電話が鳴った。
私はめんどくさそうに携帯を探し、そして画面を見るなり笑みがこぼれた。
ああほらね、ダメだね私。
「もしもし……湊?」
「あっ、利那。起きてた?」
「うん……」
生の湊の声も好きだけれど、電話越しに聞こえる湊のいつもよりテンション高め(に、聞こえる)声も好きだ。
湊の声を聞きたい私は、極力言葉を控える。
夢見心地で、相手を待つ。
「うーんとさ、明日デートなんだけど、利那も来てくんねーかなって」
「……へっ」
私はやや遅れて反応した。
「デ……デート……?」
頭だけでは処理できず、つい口に出してしまった。
先ほどとは打って変わって私の心は陰り始めた。
けれども湊はあっさりとしていた。
「うんほら、言ったじゃん、彼女出来たって。一年のトーコちゃん」
「え、え、あ、ああ」
私はひどくうろたえた。もう泣きそう。
だめだ。耐えられない。もう聞くしかないね。
怖いけれど。
壊したくないけれど。
私は勇気を振り絞った。
携帯を握る手に力が入った。
「あ、あのさ……」
「ん?そんな声で、どうかしたか?」
無駄に優しくするな、バカ。
余計泣きたくなる。
「私のこと、どう思ってるの……?」
消え入りそうな声だった。
相手に聞こえたかはわからない。
最悪の結果に覚悟はできてる。
身体が小さく震える出す。
「……えっ、何。好きだけど」
何言ってんの、みたいなあっけらかんな返事に、私もキョトン、となった。
しかもなんだか私がおかしいみたいな雰囲気。震えが止まる。硬直。
今日の私は随分と忙しい。
「好きだから付き合ってんじゃん?」
その言葉に少しの安堵を覚える。
えっ、じゃあ……彼女っていうのは?デートっていうのは……?
何かの間違いかな?と、ほんのわずかに期待を持ち始めた私に次の瞬間、湊はとんでもないことを言い放った。
「……好きだよ。……利那も、トーコも」
グサリ。
私の胸に抜けない剣が刺さった。