クールな彼を妬かせたら

クールな彼を妬かせたら

「え！？待って！電話！電話きてる！」


携帯画面を見て、あたしは思わず絶叫していた。


表示されていた名前は二週間ぶりに見るあたしの彼氏『ヒロキ』の名だった。


大学から帰ってきてすぐにお風呂へ入っていたから、今になるまで気が付かなかったのだ。


嬉しい気持ちと一緒にヒロキの電話に出られなかったショックが響く。


「お母さん何で教えてくれなかったの！？」


携帯片手にキッチンに立つ母親のもとへズカズカと歩み寄ると、お母さんはあたしの姿を見るなり呆れたようにため息をついた。


「あんたねえ…バスタオル一枚で家の中うろついてないでさっさと服くらい着なさいよ」


「そうじゃなくて！せっかくヒロキからの電話だったのに何で教えてくれなかったの！」


「あら、ヒロキくんから電話？だってお母さんずっとキッチンに立ってたし気づかなかったわよ？」


「もう～お母さんのばか～」


「かけ直せばいいじゃない」


「そういう問題じゃないんだもん…！」


ヒロキから連絡してくれるなんて滅多にないことだ。


遠距離恋愛を始めてもうすぐ二年が経つけど、いつもいつも連絡するのはあたしの方からで、その電話に出てくれるのだって五回に一回くらいの低確率だし。


いっつも「寝てたから気づかなかった」とか「電源切ってた」とか「飲みに行ってたから」とか言って、あたしの事なんて二の次なのだ。


そんなヒロキに愛されているのか不安になってしまって…。我ながらバカな作戦だとは思ったけど、ヒロキから連絡がくるまでは絶対にあたしの方から電話はしないと自分の中で決めていたのだった。


そして二週間、待ちに待ち続けてようやくきた連絡だったのに…！