背伸びして、キス


「こんな遅くまで連れまわして、一華の両親に悪印象与えたくないんだけどなぁ」



洋介さんは困ったように笑った。
そう言う事も、考えてくれるところ、ほんと大人だ。



「大丈夫ですよ。うちの両親、私が何をしてても知りませんから」

「え?」

「二人とも海外赴任なんです。だから、家には私とおばあちゃんだけなんで。おばあちゃんも9時過ぎたら寝ちゃって起きてこないし」

「・・・そうだったのか。いや、だからって、夜遊びはダメだからな」

「はぁい」




まるでお父さんみたいな言い方に笑った。
本当のお父さんにはそんな事言われたことないけど。



「寂しくないか?・・・って寂しいに決まってるよな」

「・・・慣れてるから平気です」




今まで一度も、家族団らんなんてなかった。
今の状況が寂しいというなら、その寂しい状態がずっとだ。

私にとって、それが当たり前の日常。




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