背伸びして、キス


洋介さんと会ったあの日、その後のメールで寂しくなったらその時出れなくても折り返すから電話をしてきてもいいと言ってくれた。




「一華ちゃん、お母さんから電話だよ」

「あ、うん。ありがとうおばあちゃん」

「・・・気を落とさんとね」



そう言って子機を渡され、私はなんとなく意味を察した。
おばあちゃんに笑って頷いてその電話に出た。



「もしもし、お母さん」

――ああ、一華?あの、明後日そっちに帰るって言ってたんだけど、私も誠司さんも仕事で帰れなくなったの。ごめんなさいね

「そっか」

――あなたも、もう高校生だしね。大丈夫よね

「うん。大丈夫。仕事がんばってね」

――ええ。じゃあね。おばあちゃんの言うこと聞くのよ

「わかってるよ」



そして切れた電話。
用件だけの、素っ気ない電話。

私の事を案じてくれる言葉なんてない。



もう、慣れたけどね。




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