背伸びして、キス


外からこっそり中を見る。
フロアを歩く店員が見えた。

男みたいだ。



一華は、どこだ?



目を凝らし中を伺うが、一華の姿を探すことはできない。
奥に引っ込んでるのか、休憩中か?



出来ればいる時に入りたいんだけどな・・・。





「・・・洋介?」




背中から投げかけられた声にハッとして振り返った。
その声は、柔らかくきっと、忘れることなんてできない声で。



会わなくなって6年。
きっと、いまだに忘れられない声――――。



一気に、あの頃に引き戻されてしまうほど。




「・・・広美」




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