背伸びして、キス
広美とは、小学校の頃からの幼なじみだった。
遊ぶのだって、宿題をするのだって、いつだっていっしょで。
そんな広美への想いが他の友だちへのそれとは違う事に気づいたのは6年生になってからだった。
年が上がるにつれ、互いに他にも友達が増え、一緒に遊ぶ時間が減ってきた。
そんな中、俺は広美への特別な感情を募らせていった。
「洋介には、私思った事なんでも言えるんだ。ずっと一緒にいるからかな」
「他のやつにだって、いろいろ話してんじゃん」
「違うよ!そういうんじゃなくて、洋介は特別なの!」
広美が言った“特別”という言葉に、深い意味なんてなかった。
それには、友だちとして、幼なじみとして、そういう意味しかなかった。
でも、俺にとっては、その言葉が、それ自体が俺にとっての特別になった。
だから、広美はずっと自分の側にいるんだ。
だって、俺は特別だから。
俺は、自分にいいようにそう解釈した。