背伸びして、キス
久しぶりに会った広美に、そう告げられるまで俺は何も知らなかった。
知ろうとしなかった。
「私、結婚するの」
頬を赤らめ照れくさそうに告げた広美に、俺の時間は止まったような気がした。
理解、できなかった。
結婚・・・・。
誰とだとか、いつの間にとか、いつからだ、とか
聞きたいことは頭の中でぐるぐる渦巻いているのに、言葉に出てきたのは「おめでとう」っていう思ってもないちんけな言葉だった。
「短大に入って知り合った年上の人で・・・。洋介には一番に言いたかったから。洋介は、私にとって、本当に特別な人だったから」
その時に、俺の思っていた特別と、広美が想っていた特別の意味の違いに気づいた。
バカだと思った。
俺は何も動こうとしないで。
確かめようともしないで。
覚悟もなくて。
特別だと言われたその言葉だけをバカみたいに信じて。
幼なじみという位置にいなければ、もっと別の出会い方だったら。
今更、そんな事を想った。
結婚式には出たけど、正直なにも覚えていない。
なにもできなくて、気づいたときには想いすら伝えることが出来なくなっていた。
未消化な恋。
不完全燃焼な恋。