背伸びして、キス
「はな・・・して・・・っ」
違うんだ。
あんなの、信じないから。
違うって、洋介さんに言ってもらうんだから。
そうすれば私、信じられるから。
「俺に、してよ」
その声に、縋ったりなんかしない。
私の気持ちは、動いたりなんかしない。
洋介さんを好きになって。
社会人を好きになって。
簡単な覚悟で好きになったわけじゃないよ。
私がいったんだ。
洋介さんを振り向かせてみせるって。
まだ、完全じゃない気持ちを私に向けて見せるって。
今行かなきゃ。
洋介さんに、私の気持ちちゃんともう一度伝えなきゃ。
「離してください!」
声をあげると、すんなりと腕は解かれた。
時東さんは、おどけた表情で両手をあげる。
「つまんないの。ま、俺はいつでも待ってるからね」
おちゃらけた様子でそう言った。