背伸びして、キス


時計の針が6時を回る。
スマホを取り出し電源を入れてみても、連絡はない。


仕事、終わらないのかな・・・。



いつも終わるの遅いもんね。
今日だけ早くなんて、やっぱり無理だったのかな。



無情にも時間は着々と過ぎていく。
6時半になってしまった。


レストランの予約は7時。



待ち合わせをレストランの近くにしてよかった。
もし仕事が遅くなったらと思って、なるべく近くで待ち合わせることにしたんだ。
だから、まだ間に合う。
最悪7時ギリギリになっても、きっと大丈夫。




「・・・あら、足立さん」



不機嫌そうな声が聞こえ顔をあげると、工藤さんの姿。



「あ、く、工藤さん・・・」

「久しぶりね。・・・はぁ、思わず声かけちゃったじゃないの。なにしてるの」

「え、あの・・・洋介さんを」

「あら、あなた。まだ一条くんと付き合ってたのね」



いちいち突っ掛かる言い方を・・・。
でも、工藤さんも一条さんの事好きだったんだもん、仕方ないよね。
だった、じゃなくて今も、なのかな・・・。



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