背伸びして、キス
「・・・一応言っとくけど。私、一条くんの事もう何とも思ってないから」
「え」
「はっきり言われて、諦めついたわ。私もいつまでも一条くんを追いかけられるほど若くないしね」
「そう、ですか・・・」
「でも、一条くんならとっくに会社出てるわよ。今日は残業せず帰ってたはずだけど」
「え・・・、あ、そうなんですね。じゃあ、もうすぐ来るかもです。ありがとうございます」
工藤さんを見送り、私ははぁ、と白い息を吐いた。
会社は出たんだ。
じゃあ、もうすぐしたらくるよね・・・?
早く帰れたから、一回家に帰ってるのかも。
車じゃなかったらお酒飲めるし。
飲んでもいいよって言ってあるし。
「工藤さん、もう好きじゃないって・・・よかったな・・・」
白い息とともに吐き出した想い。
―――――――……
カチカチ・・・カチカチ・・・・
「よし、定時には帰れそうだな。一華を、待たせないようにしないと・・・」
ブーブー・・・
『 着信 広美 』