背伸びして、キス
泣くつもりなんてなかったの。
だって、そんなの。
認めてるみたい。
「違う・・・違うんだってば・・・」
「わかった。きっと、なにか事情があったんだね。それでいいから、俺と一緒に行こう」
「でも、だって、・・・」
「お腹すかない?俺、ぺっこぺこ。予約してたとこ、そこ行こうよ」
「え・・・」
「どうせ、これ以上遅れたら予約取り消されちゃうよ。だから、せっかくだから行こう。お金は俺持ち。いいでしょ」
私の手を引き歩き出す。
チラチラと待ち合わせの場所を振り返ってみても、結局洋介さんの姿は見つけられなくて。
引かれるまま、一緒に行くはずだったレストランに向かった。
「ベタなとこ選んだねぇ。有名なところじゃん」
「・・・うるさいな」
「さ、ほら、いこ。もし途中で来たら、俺帰るしさ」
途中で来たら・・・。
そんなの、困る。
私だって、あの女の人と一緒にいるところ見たくなかったのに。
同じような場面、見せたくない・・・。
「いいから、行くよ」
でも、時東さんは強引に私を中に引きいれた。