背伸びして、キス


様子を見に行って、広美が落ち着いたらすぐに向かおう。
とりあえず、遅れるって連絡して・・・。



「あ・・・」




車まで走りながらスマホを操作しようとして手が滑り、スマホをコンクリートの上に落としてしまった。
画面全体にひびが入り、ボタンを押しても反応しなくなってしまった。



「くそ・・・」



今から行って、事情話すか・・・?
許してくれるか?

でも、許してくれたとしても、そんな一華を置いていくことはできるわけない。


だったらどうするんだ。
広美にはいくと言ってしまった。


一人で、混乱している広美を落ち着かせるだけ。



そう思い、俺は車を広美の家まで走らせた。




子どもの熱は下がらず、夜間診療に連れて行った。
高い熱が続いているため、少し様子を見るためにも入院することになってしまった。


ようよう、離れられなくなった。
おいていくことは、できなかった。



友だちとしてだ。
それ以上の気持ちはない。


そう自分に言い聞かせるように思った。




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