背伸びして、キス
朝まで付き添って。
気分が落ち込んでいる広美を落ち着かせるため近くのカフェで朝食をとって病院に戻った。
シングルマザーで一人で抱え込んで頑張ってきた広美。
子どもの病気により、張り詰めていた糸がプツッと切れ取り乱してしまったんだろう。
「側にいて・・・」
儚げに呟いた広美の声。
その手を放せなかったのは、俺だ。
そのまま一度家に帰った俺は着替えてすぐに出勤した。
昨日の事、一華になんの報告もできないまま。
壊れたままのスマホがもどかしく。
仕事をしないといけない状況がとてももどかしかった。
「そういえば、昨日は会えたの?」
「はい・・・?」
「足立さん。待ち合わせしてたんでしょう?」
「なんでそれを」
工藤さんに話しかけられ驚く。
そんな話、していない。
そもそも、前回のトラブル以来仕事以外の話を一切していないのだ。