背伸びして、キス
連絡を入れるつもりが、慌てていてスマホを壊してしまって連絡が取れなくて。
一度私のところに事情を説明しに行くつもりだったけど、逆においていかなくちゃいけないって考えた時、それができなかったこと。
まだ時間に余裕があったから、さっさといって落ち着かせていくつもりだったこと。
でも、思いの外子どもの熱が高く、病院まで付き添うことになり結局大事をとって入院することになって、心細い広美さんの側から離れられなかった。
「あいつ、自分の判断が間違ってたから仕方ないって言ってた。広美の電話に出なければ、とか。ほっとけないって思ったのが間違いだったって・・・」
「洋介さん・・・」
「でも、俺は、あいつがそんなことできるやつじゃないって知ってる。例え、それが広美じゃなくても多分あいつはそうしてただろうと思う」
広美さんが相手だから駆けつけたわけじゃない。
槙原さんの言葉が胸に染みた。
きっと、そこが引っかかってた。
洋介さんが、ずっと思っていた人。
秘めた想いをずっと抱えていた人。
忘れられなくて、切ない気持ちを何年も引きずって。