背伸びして、キス


「ぷっ、そんなむくれんなよ。悪いって。この一本でやめるから」




一条さんがおかしそうに噴出して笑った。
あまりにも自然と笑うから、思わず見惚れてしまった。


初めてそんなに笑ってるの見たかも。
ずっと、ムッとした顔とかそういう顔しか見てなかったから。

こんな風に笑うんだ。



ドクン――――




あれ。
なんだ、これ。


心臓が、おかしい。




「お待たせしました。アイスコーヒーとアイスココアです」




そのタイミングで店員さんが注文したものを運んできて、私の気持ちはまぎれた。
なんだったんだろう・・・?



「砂糖とかいれないんですか?」

「あ?ああ。ブラックが好きだからな」




くそ、大人め。




< 35 / 351 >

この作品をシェア

pagetop