百の魂に幾千の想いを

6.代償の欠片

視界が涙で見えない。
しゃがみこんだ私の肩を誰かが叩く。

「ほら、どうぞ」

すっと渡される布。
手触りがとてもやわらかい。

「ありがとう、願い桜さん…」




「さて、代償を頂きますよ」

泣き止んだ私に願い桜さんはそう言った。
私は黙ったまま頷く。

ぼきっ

「へっ?」

願い桜さんは八重桜の枝をへし折った。
そのまま私と向かって立つと、ぶつぶつと呟いきながら私の胸元の宙に指先で何かを描いていく。

「!」

胸元の宙に何かの紋様が花開く。

「失礼しますっ」

願い桜さんは八重桜の枝をその紋様の中央に向かって刺した。
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