百の魂に幾千の想いを
「…え?」

枝は紋様を越え、私の胸元に刺さっていた。
痛くない。

ただ、何かが奪われていく感じがする。

胸元に刺さる枝と紋様が霧散する。霧散した光の粒子は1つの小さな丸い光となった。

小さな光はふわふわと願い桜さんの所へ意志があるかのように飛んで行った。


「…これで90個目」

ぼそっとそう言うと共に周りに丸い光が現れた。それは数個だけではなく、数十個に及ぶ。それぞれ大きさが異なり、発光する色も違う。

「これは…」

願い桜さんはさっきの光に落としていた視線を私に向けた。

「これは全部、私が願いを叶えた者の魂の欠片。貴女ので90個目です」

ふわふわ浮かぶのは『代償』

「90個目って、ひょっとしたら願い桜さんは集めてるんですか?」
「ええ、とある事情で100の魂を集めないといけないんですよ。…それより、早く帰ったほうがいい。闇が蠢き始めた」

私の背の向こうを願い桜さんはじっと見つめる。私も振り替えるが、ただの闇にしか見えない。

「この空間は異界。私との契約が終わった貴女はこの異界にとって異物。だから早くしないと、ばい菌のように排除されますよ」

後ろに立った願い桜さんはそう言うと

どんっ!

「うわっ!?」

おもいっきり私の背中を押した。反射的に身体を捻ってみると、白い袖を振る願い桜さん。

身体は後ろに吸い込まれるようにして、やがて願い桜さんは見えなくなった……
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