百の魂に幾千の想いを

3.空から降る声は誘う

遅刻などしなければ、孝雄は死ななかった。
私は孝雄を殺した。

だから、悲しんではいけない。



「…っ…は…あ」

喉が悲鳴をあげている。
身体は酸素を取り込もうと、何度も何度も息を吸う。

見渡せば、森。
大学の隣にある小さな森だ。
確か、神社の鎮守の森だと説明会で言っていた気がする。



悲しんではいけない。


それは自分で決めたコト。


心残り、後悔はある。

彼は何を言いたかったのか。

あの日、何処に行きたかったのか。

けれどもう、分かることはない。

それは私の罪。

全部、背負うんだ。
孝雄の命の代償として。

想い出、心残り、後悔…

何もかも。

悲しんではいけない。

涙など流してはいけない。

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