百の魂に幾千の想いを
『本当にそれでいいのですか』

それで、いいの。決めたんだもの。


『今にも泣きそうなのに?』

だって私は資格がない。

『彼が望んでいなくても、貴女は苦しみ続けるのですね』


はっと我に返る。
穏やかな声は気のせいだったのだろうか。

「!…誰…?」

降って来る声。
辺りを見渡せど、木々。人の姿は見えない。

『私が誰でもいいでしょう。答えなさい。貴女は苦しみ続けるのですか。彼がそれを望んでいなくても…』

「彼………孝雄?」

聞き返しても、声は答えない。沈黙は肯定。

「孝雄なの…?…っ?」


ぐちゃりと景色が歪む。 暗闇へと落ちて……
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