百の魂に幾千の想いを
「本来なら叶わない願いを、代償を対価に叶える者、願い桜です。安倍志乃さん」
「…なっ」

深緑色の瞳が私を捕らえる。

「さて、貴女の願い叶えますか?」
「願い…って」
「ええ、幼馴染みの少年に会いたいんですよね。まあ、相手は死者。…その少年、貴女の近くに居ますよ。ただ貴女が常人ゆえに感知出来ないだけで」
「!?」

私の近くにいる…?

「可哀想に。想い人から己の死を悲しまれないなど、彼の想いさえ踏みにじるのと等しいですね」
「彼の想いって…?」
「私、同じこと何度も言うのは嫌いなんです。聞きたいなら、願いを叶えれば良いですよ」「…代償って、何を?何をあげればいいの」
「貴女の魂を…」
「魂!?」

魂が代償とは、以前読んだ本に出てきた悪魔のようだ。

「…人の話は最後まで聞けと大人に言われませんでしたか」
「は、はい!すみませんっ」
「代償は魂の欠片です。欠片の大きさは願いの大きさに比例しますが」

願いの大きさに比例ということは、欠片ではなく、魂まるごともあるのだろう。
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