わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
それに比べると、確かにリリアンヌのドレスはレースも少なくてゴージャスとは言い難い。
けれどこのデザインはお気に入りで、メリーたちが懸命に準備してくれたもの。
王女に言い返してやりたいリリアンヌだけれど、ここでトラブルを起こしてはいけないと堪える。
「それに、このわたくしを知らないなんて、どんな山奥からいらしたのかしら?ねえ、あなたたち、わたくしが誰なのか、この方に教えて差し上げて」
「はい。聡明で美しいと名高い、ククル王国のレミーア王女さまでございます」
五人そろって言うそれはまったく抑揚がなく、まるで書かれた文字を読んでいるよう。
そんな様子にリリアンヌは半ば唖然とするけれど、大国の王女は皆こんな雰囲気なのかと思う。
「ああ、そうだわ。一言申しますけれど、あなた、アベルさまのお妃の座を狙ってるならよした方がよろしいわ。そのドレスが涙で濡れる前に、早々に帰国した方がよろしくてよ」
「それはどういうことでしょうか?」
リリアンヌが少し首を傾げてみせると、レミーアは「あら、お分かりにならないの?」と言って眉を上げた。
「そんなの決まっているわ。ねえ、あなたたち、誰がアベルさまのお妃になるのか、この方に教えて差し上げて」
「はい。王太子さまには思い人がいらっしゃいます。それは、聡明で美しいと名高いレミーア王女さまにございます」
またまた棒読みの練習されたような答えが返り、レミーアはオホホホホと満足げに笑った。