わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!

「まあそういうことですの。それに・・・とっても小さなお国の王女では、この大国のお妃は務まらないわ。ねえ、あなたたち?」

「はい。なにもかも完璧でいらっしゃるレミーア王女さまこそ、ふさわしいと存じます」

「では。ごきげんよう」


レミーアは言いたいことだけ言って満足したようで、ツンと顔を上げてバサッとドレスをひるがえし、メイドを従えて遠ざかっていく。

まるで変な芝居をみたような心持ちで唖然とするリリアンヌとは反対に、ハンナは握った拳をぶるぶると震わしている。

必死に我慢していたハンナは、レミーアが見えなくなると同時に怒りを開放するようにダン!と踵を鳴らした。


「なんですか!あれ。あれがコックが称賛していた王女さまなのですか!?」

「そうらしいわね・・・」

「リリさま、あんなの嘘に決まっていますわ!アベルさまの許嫁はリリさまと決まっているんですから!」


ムキーッと憤慨するハンナをなんとかなだめるリリアンヌだけれど、心中には複雑な思いが広がる。

もしもアベルに思い人がいるのなら、自分は許嫁を解消するために誕生パーティに呼ばれたのだろうか。

コックの話を思い出せば、レミーアは毎年誕生パーティに呼ばれていると言っていた。

何度も会えば恋が芽生えてもおかしくない。

国同士で決められた約束は簡単に反故できないが、もしもそうなればと考えるとふとレイの姿が浮かんでしまい、それはいけないことだと戒める。

自分はミント王国の王女で、大国の王太子と婚姻を結ぶのが定めなのだ。

どう足掻いても、レイへの思いが叶うことはない・・・。


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