わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!

「王太子さま、お誕生日おめでとうございます!」

「おめでとーございまーす!」


澄んだ青空の下、王都の街にひらひらと花弁が舞う。

花かごを持った人が街中のそこかしこで花弁をばらまき、祝の歌を歌いながら練り歩く。

王太子の誕生日の祝いは王都のお祭り。

皆でごちそうを食べてお酒を飲む日なのだ。


王太子がお年頃になってから毎年話題になるのは妃のこと。

パーティには独身の貴族方がたくさん招かれて出会いの場にもなっており、今年こそは何らかの発表があるかもしれないと、国民は皆期待していた。

おおっぴらに口に出さないが、皆が予想するお妃はククル王国の王女さま。

いわゆる、宣伝の賜物である。


さて、王都の皆が注目するリオン城客間の一室では、支度を整え終えたリリアンヌを囲み、メイドのふたりが華やいでいた。


「リリさま、よろしいですか?アベルさまにお会いしたら、まずは微笑むことですわ。瞳をじっと見つめてにこりと。もう、それだけで、一目惚れされますこと間違いないですわ!」


ハンナが断言すればメリーがすかさず後を続ける。


「そうですわ。今日のリリさま、大変お美しいんですもの。王太子さまもイチコロですわ!」

「そうです!ククルの王女さまなんて、屁でもありません!」


ハンナは拳をぐっと握り、闘争心をむき出しにしてフンッと鼻息を出す。

昨日の出来事を思い返すといまだにムカッとするのだ。

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