わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!

気分が沈みがちなリリアンヌだけれど、二人にずいぶん元気づけられ自然な笑顔になる。


「二人ともありがとう。ハンナとメリーがいたから楽しく旅が続けられたわ。これからもよろしくね」


その言葉にメイドたちは嬉しくなり、ますますリリアンヌのことが好きになった。


もうすぐアベルの誕生パーティが始まる。

城門から城まで馬車が数珠繋ぎになっており、内外から高貴な方々が続々と集まってきていた。

開始時間が近づくと部屋まで迎えが来て、リリアンヌは大広間へ移動する。


「ミント王国のリリアンヌ王女さま、どうぞ」


うやうやしく両開きのドアが開かれると、そこにはきらびやかな世界が広がる。

着飾った紳士に淑女。お世辞とけん制と策略がはびこる上流の世界。

リリアンヌとって、アベルとの初対面に加えて初の社交の場になる。

ミント王国の王女として粗相のないように立ち回り、王太子がどんな人でも微笑みかけて好意を示す。

緊張するが、メイドたちの期待に応えて頑張らねば!と気合いを入れた。


大広間の中はすでに人が溢れており、そこかしこで談笑する人たちの輪が作られている。


「アベルさまはどこかしら?」


ブツブツ呟きながらそれらしき人を探して見回すと、ゴージャスな桃色のドレスを身につけたレミーアを見つけた。


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