わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!

「はじめまして。私はククル王国の王太子、レナードです。よろしく」


優雅に礼をとる男性がレミーア王女の身内と知って驚くけれど、リリアンヌは落ち着いて名乗り微笑みかける。

目元がレミーアによく似ているが、ウェーブのある髪は癖毛なのだろうか、長めの前髪が上品な顔立ちを際立たせている。


「ミント王国か。山に囲まれた美しい国だ」

「はい。ご存じだとは、とても嬉しいです」


昨日レミーアに知らないと言われ、確かに小さな国だけど・・・と、へこんでいたのだ。素直に嬉しくなる。


「レミーアさまは妹さまですか?」

「ああ、そう・・・ん?どうして妹を知ってるんだい?」

「昨日庭でお会いしました」

「そうか。もう挨拶済みとは驚いたな。こんな可愛らしい人に声をかけるとは、我が妹ながら、なかなか目ざとい。そしていち早く君に声をかけた私もね。お陰で独り占めできる」


ふわりと微笑むレナードの物言いがとても大げさに思え、リリアンヌは可笑しくてクスクスと笑う。

恥ずかしくなるようなことを臆面もなく言うレナードは、相当に場馴れしているのだろう。さすが王太子だ。

しばらく話をしていると、にわかに皆がざわめき始めた。

それは和やかな談笑の雰囲気とはまったく違い、色めきたつようなもの。


「どうやら、お出ましになったようだよ。アベル王太子だ」


< 107 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop