わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「はじめまして。私はククル王国の王太子、レナードです。よろしく」
優雅に礼をとる男性がレミーア王女の身内と知って驚くけれど、リリアンヌは落ち着いて名乗り微笑みかける。
目元がレミーアによく似ているが、ウェーブのある髪は癖毛なのだろうか、長めの前髪が上品な顔立ちを際立たせている。
「ミント王国か。山に囲まれた美しい国だ」
「はい。ご存じだとは、とても嬉しいです」
昨日レミーアに知らないと言われ、確かに小さな国だけど・・・と、へこんでいたのだ。素直に嬉しくなる。
「レミーアさまは妹さまですか?」
「ああ、そう・・・ん?どうして妹を知ってるんだい?」
「昨日庭でお会いしました」
「そうか。もう挨拶済みとは驚いたな。こんな可愛らしい人に声をかけるとは、我が妹ながら、なかなか目ざとい。そしていち早く君に声をかけた私もね。お陰で独り占めできる」
ふわりと微笑むレナードの物言いがとても大げさに思え、リリアンヌは可笑しくてクスクスと笑う。
恥ずかしくなるようなことを臆面もなく言うレナードは、相当に場馴れしているのだろう。さすが王太子だ。
しばらく話をしていると、にわかに皆がざわめき始めた。
それは和やかな談笑の雰囲気とはまったく違い、色めきたつようなもの。
「どうやら、お出ましになったようだよ。アベル王太子だ」