わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「レイは・・・アベルさまは、とてもイジワルです!」
プンとすねて見せる。
その位の反抗をして困らせたい。
それに、気になることがある。
宿場街でレイは言ったのだ。『とんだじゃじゃ馬だ。嫁の貰い手がなくなるぞ』と。
「・・・許嫁は、わたくしでよろしいのですか?レミーさまは?」
震えながら尋ねるリリアンヌの体を、レイは後ろから抱きすくめた。
愛しくてたまらず、こんな気持ちになれるのはリリアンヌだけだ。
「妃はリリでなければ、俺が困る。レミーアは困った幼馴染の妹で、国同士の繋がりがあり邪険にできない。それだけだ。だが、俺に妃ができれば収まる」
「木登りとか、弓矢とかする、こんなじゃじゃ馬でもいいのですか?」
「そこがリリの魅力のひとつだ。あのとき、宿屋の横でそのままでいろと言っただろう」
本当に?ともう一度尋ねるリリアンヌの体をくるりと回して、レイはまっすぐに見つめた。
「幼い頃、父と旅に出て雪道を迷ったことがある。吹雪にあい、さまよっているところをミント王国の民に助けられたんだ。リオン王国の一行だと知られて城で保護されていたとき、初めてリリに会った」
「そんなことが・・・?」
「話されていないのか、リリのご両親もなかなかの秘密主義だな・・・。とにかく、そのときに許嫁の約束が交わされた。あのとき赤子だったリリに一目惚れし、川で二度目惚れをし、宿の横で三度目惚れをした。そして、今日ダンスを踊るリリにまた惚れた」