わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「・・・困ります」
「分かっている。何年も待ったんだ。あと少しくらい待てる」
レイは広間の中にリリアンヌを誘った。
曲を奏でる楽師たちを止め、リリアンヌの手を引いて中央に進み出る。
何事が起こるのかと、しんと静まった広間の中にレイの声が響き渡った。
「皆に発表する。この私、アベル・レインハドル・リオンは、ミント王国リリアンヌ王女と婚約を交わした」
一瞬の沈黙の後、わっと拍手と歓声が沸き起こり、ククル王国兄妹の唖然とした表情は、皆の笑顔の波に埋もれた。
パーティが終わり、部屋に戻ったリリアンヌからレイがアベルだと聞かされたメイドたちは盛大に驚いた後に飛び上がって喜んだ。
特にハンナはずっと気にかけていたので感激もひとしおで涙を流している。
よかったよかったと三人で喜びを分かち合う。
そして、メリーがトーマスにプレゼントを渡したことなど、おしゃべりをして過ごす時は瞬く間に過ぎ、すぐにリオン王国を旅立つ朝を迎えた。
城のロータリーで旅支度を整えたミント王国の一行が集まる。
リリアンヌはレイと向き合っていた。
互いに名残惜しいが、しばしの別れの時だ。