わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「リリ、さよならの時間だ」
宿場街で聞いたのと同じ言葉だけれど、あのときとは意味がまったく違う。
先の約束があるもので、リリアンヌはにこりと微笑んだ。
「はい。あの、これを受け取ってください。誕生日のプレゼントです。昨日渡しそびれてしまって・・・」
少し寂し気に微笑むレイに、リリアンヌは細長い箱を手渡した。
「何が入っている?」
「羽ペンです。もっとお手紙を書いてほしくて、選びました。使ってください」
「了解。愛の言葉をたくさん書くとしよう。リリが早くこちらに来たくなるように」
レイは額にキスをおとしてリリアンヌを抱き上げ、馬車に乗せた。
出発の合図がなされゆるゆると一行は進む。
リリアンヌは、レイの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。