わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!

さて、パーティを終えた二人。

アベルは王太子の部屋へ、リリアンヌは王太子妃の部屋へと戻っていた。

リリアンヌは白い夜着を身に着けてドレッサーの前にいる。

たった今、メイドのハンナが髪を整えて肌に香油を塗って夜の準備をし、ベッドサイドの灯りだけを残して部屋を辞していったところだ。

これから何が起こるのか、リリアンヌとて知らないわけではない。

婚姻の後にするもの、そう、夜の儀式だ。

ミント城を出発する前夜に、母である王妃から夜のお作法を教えてもらっている。

『湯に入って身を清め、夜着に着替えてお迎えするのです。アベルさまが来たらにっこり微笑むの。その先は、何もかもお任せすればいいのですよ』と。

その先とは?と何度も訊いたけれど、肝心な部分は殿方によって違うからとぼかされており、実のところ何をされるのか分かっているようで分かっていない。

ドアが開く音がし、薄暗闇の中から現れた人影がベッドサイドの灯りに照らされる。

白い夜着を着たアベルがリリアンヌの前に立ち、小さな手を取って立たせた。

灯りに照らされた鳶色の瞳がいつもと違う感じがし、緊張と期待で小さな胸が震える。

だってアベルは言ったのだ“夢ではないと分からせる”と。


「リリ・・・今日は疲れたか?」

「はい。少しだけ。アベルさま、お疲れさまでした」

「俺は、平気だ。リリ、今からのことだが・・・なるべく優しくする。だが、途中で理性がとぶかもしれん。許せよ」

「・・・はい」


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