わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!

「その通りでございます。ですが、騎士さまは違います。それを平然と、軽々と、してくださいます。鍛えられた男性の逞しさを感じますし、何よりも、自分を守っていただけたことが女性は嬉しいのですわ」

「守ってもらうことが?」

「そうですわ。私たちにとっては、他の誰でもなく“自分を”がミソなのです!」


そう力説するハンナの隣でメリーも力強く頷き「逞しい優しさに胸が高鳴るのです」と補足するように言う。


「こう、心臓が壊れそうなほどに、ドキドキするのです」


昨夜を思い出したのだろう、メリーが胸を押さえて切なそうなため息を吐く。


「そういうものなの?」

「そういうものでございます!リリさまも、アベルさまに抱き止められれば同じように感じるはずですわ!」


ハンナの講義を受けても、リリアンヌには今ひとつピンとこない。

兄王太子は自分が飛び付いていけば、いつも力強く抱き止めてくれる。

軽々と抱き上げてくれて、逞しくて優しくて大好きだ。

だから、抱きとめてもらって嬉しいというのは分かる。

それに、兄は身内だからドキッとしないことも。

けれど、今まで何度も転びそうになったところを騎士に助けられてはいるが、一度もドキッとしたことがない。

相手によって違うんだろうか。

まだ見ぬアベルを思い胸はときめくけれど、メリーの言う“高鳴る”とは違う気もする。

ハンナの言う通り、アベルに抱き止めてもらえればドキッとして胸が高鳴るのだろうか。

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