わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
ハンナの初恋話が始まり、二人の恋話でますます盛り上がる馬車は快調に走る。
やがて速度を緩めてゆっくり停まった。
「リリさま、暫し休憩いたしましょう」
マックから声がかけられて降り立ったリリアンヌの瞳に、広い野原一面に咲く花が映った。
緑の中で淡い黄色の花弁が、風に吹かれてさわさわと揺れている。
「綺麗・・・とても甘い香りがするわ」
「この花の群生は見事で、リリさまにご覧いただくように予定が組まれております。ゆっくりお過ごしください」
「ゆっくりとは。マック、時間はたっぷりあるのですか?」
「はい。ここまで来れば、次の野営地まであと一息でございますから」
騎士たちは馬に水を飲ませて火を起こしていて、昼食もここで済ませるという。
リリアンヌはハンナたちを従えて野原の中へ入った。
花は思ったよりも丈が低く、背の低めなリリアンヌの膝よりも低い。
かがんでよく見れば、淡い黄色の花々は四枚の花弁を持つ小さな花が集まって一つの花を成していた。
「リリさま、ご覧ください。あちらに可愛い動物がいますわ」
メリーが指さす野原の向こうに、草を食む白い動物がいる。
耳も体も丸っこく、今まで一度も見たことがないものだ。
興味をひかれたリリアンヌはよく見ようと思い、ゆっくり近づいた。