わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
騎士たちははるか向こうの道のそば。
忙しくしており、こちらに気づくことがない。
「あ・・・私、呼んできます!」
そう言って騎士たちの元へ走り出したメリーを一瞥したレイは、フッと笑って少し腕の力を緩めた。
険しかった鳶色の瞳が少し柔らかくなる。
「どうして、あなたがここにいるのですか」
「・・・偶然だ。俺は野草をとっていただけ。だが、二度も会うとは、お前とは縁があるな」
「何を言うのです。あなたとの縁など、1ミリもありません!」
無礼で、何を考えているのかわからない。
そんな人と縁があるなど考えたくもない。
「そこのお前!リリさまを離せ!!」
花を散らしながら猛然と疾走してくるマックたちの姿を見たレイは、ニヤリと笑い、素早く腕を離して「また会おう」と言い残し、森の中へ消えていった。
「リリさま!ご無事ですか!」
息を弾ませたマックがリリアンヌの体を庇うように立ち、残りの騎士が森の中の様子を伺う。
そのとき、ハンナが小さな悲鳴をあげ、震えながら後ずさりをした。
「リリさま、お逃げください」
震えた声を出すハンナの視線の先に、茶色と黄色のまだら模様の大きな蛇が這っていた。
不気味なそれは、獲物を捜すように赤い舌をチロチロと出し、するすると這ってどんどん近づいてくる。
それを見たリリアンヌが恐怖のあまりに息をのんだ瞬間、森の方から騎士の声が飛んできた。
「マック隊長!リリさま!そこを動かないようお願いします!」
「了解した!」