わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
マックがリリアンヌの体をかばうように覆う。
と同時にヒュン!と鈍い光を放ちながら飛んできた剣が蛇の腹にざくっと刺さった。
地面に縫い止められた蛇がうねうねと苦し気にのたうつ。
それにとどめを刺すように、別の剣がざくっと頭を切断した。
どくどくと流れる血が緑の草を赤く染める。
「これは、毒を持っています。気付かずにいれば危ないところでした」
騎士が地面から剣を引き抜きながら言うと、マックが顔をゆがめて唸った。
「申しわけございません。安全な山道だと、重ね重ね油断をしていました。リリさま、あの男は何を言っていましたか」
「いえ、特に何も。ただ、あのお方は昨日魚をくださった方です」
「そうですか。あの男が・・・ハッ!まさか、このことを知っていて・・・?」
マックには、レイが只者ではないように思えた。
駆けつけるときに遠目でも感じた気は、手練れの騎士が放つものによく似ていた。
一体何者なのだろうか。
賊の類いか。
「マック、知っているとは、それはどういうことですか?」
「いえ、考えすぎでしょう。リリさま、戻りましょう。もう蛇はいないと思いますが、保証はありません。野原には入らずにお花を愛でてください」
それからは騎士たちの警戒が厳重になり、交代でリリアンヌのそばにつくことになった。
その後何事もなく野営地に着き、初日と同じように夜を明かした。