わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
ローザの宿場街
翌日、出発した馬車の中は昨日とは違う題材で華やいでいる。
朝食時にマックから知らされた次なる宿泊地に向けて、ハンナたちの胸がワクワク踊っているのだ。
「リリさま。騎士さまのお話によりますと、ローザには大きな朝市が立つそうですわ。異国の珍しいものがたくさん集まるそうです」
事前に他国のことを習っているリリアンヌは既に知りえていることだが、ハンナたちの嬉しそうに話す様子が楽しくて、つい知らないふりをしてしまう。
「そう、それは楽しみね。マックに頼んでぜひ見物しに行きましょう」
「リリさま、それに、夜はベッドで眠れますわ!」
メリーが嬉しそうに笑うので、リリアンヌは大きく頷いてみせた。
そう、旅を始めて三日目にしてようやく宿に宿泊できる。
テントと寝袋で森の音を聞きながら眠るのも、旅でしか味わえない醍醐味のひとつといえばそうだ。
でもやはり女性としては体や髪を清潔に洗い、柔らかなベッドで眠りたい。
それはリリアンヌにも嬉しいことだが、それよりも異国の街並みを見ることと人に出会えることを楽しみにしている。
それに、どんな珍しい食べ物があるのかも。
宿に到着したら、すぐさま街に出たいと思っていた。
「お店巡りもしたいですわ」
ハンナがそう言えば、何故だかメリーがポッと頬を赤らめた。