わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「私は、トーマスさまにプレゼントするものを買いたいです・・・」
助けてもらったお礼をしたいと言うので、リリアンヌは昨日の野原の出来事を思い出した。
あれもプロセスはどうあれ、結果としては助けてもらったことになるではないか。
がしかし、あのときに生まれた感情は、ドキッとして胸が高鳴るとは程遠い。
「どんなものを選べばいいのか、リリさまにアドバイスをしていただきたいです」
お願いするように手を合わせるメリーの瞳は潤んでおり、まさに恋する乙女の表情だ。
ハンナは、そんなメリーをそっと指差してみせ、リリさまこれも“乙女心”なのですよ!と言いたげに目配せをした。
リリアンヌもアベルに誕生日プレゼントを用意してある。
それを選んだときの気持ちは、今のメリーとそれほど変わらないように思う。
けれど、メリーのこぼす切なそうなため息は出すことができない。
やっぱりアベルを思う気持ちは、乙女心のそれとは違うようだ。
なんとなく、メリーが羨ましく思える。
アベルは押し花を送ってくれる優しい人で、レイのように強引で失礼ではない。
それにとても素敵な花のネックレスを選ぶ人なのだ、会えばきっと自然に乙女心がわくはずだ。
リリアンヌは少し不安になった気持ちを誤魔化すように、花のネックレスをぎゅっと握った。