わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「外出します」と立ち番の騎士に声をかければ、隊長に連絡がいき「私も同行いたします」とマックも外出の伴についた。
夕暮れ時の空と同じ髪色の女性一人にブラウンの髪の女性が二人。
笑顔で話しながら道を歩く様子は大変可愛らしく、すれ違う男性の目が釘付けになる。
特に茜色の髪に赤い花柄のワンピースを着たリリアンヌは、ひときわ視線を集めていた。
ぽや~と見惚れて話しかけようと近づく男性たちの目に、後ろを歩く二人の騎士が映ると、ビクッと体を震わせて逃げるように離れていく。
マックたちは気を休めることなく、まわりに視線を配る。
リリアンヌ王女の美しさは、どんなにシンプルな服装をしていても目立ち危険なのだ。
そのため、男性客の多いお店に入ろうとしようものなら、即止めに入った。
メリーとハンナがウィンドウを覗き、このお店にしましょうと話している。
周りを警戒していたマックが見やると、自身も惹かれるような革細工の小物が展示してあり、どう見ても男性対象の品ぞろえだ。
「リリさま、その店は駄目でございます」
「でも、マック。メリーがこのお店がいいと言うの。あそこも駄目ここも駄目では、買い物ができません。マックも一緒に入れば問題ないでしょう!」
ぷんぷんと立腹した様子のリリアンヌにそれ以上何も言えず、マックは唸りながらも女性三人の後をついて店に入った。