わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!



「こんばんは」

「おや、可愛いお客だ。一人かい?」

「はい。ここは何を売っているのですか?」

「リオン鳥の串焼きさ。ウマイぞぉ、どうだい?どれでも一本百ペクスさ!お嬢さんはその店の中で落ち着いて食べるといいよ。入りな!」


リリアンヌは屋台の脇で酒を飲んでいる男性たちに尋ねてみた。


「美味しいですか?」

「もちろんさ!」

「俺たちに言わせりゃ、宿場街といったらこの串焼きさ!うまいぜ!」


串焼きをほおばりながら、ニカーッと笑う。

それならば是非とも食べなくては!と決め、店主のすすめる通りに屋台直結の店に入った。

たくさんの人が飲食をしており、男性ばかりではなく女性の姿もある。

空いていたテーブル席にちょこんと座り、串焼きを二本とお水を注文した。

異国で初めての一人飲食にわくわくと胸を躍らせながら待つこと数分、お皿に乗った串焼きとお水が運ばれてきた。

焼きたて熱々で、皮の焼き目の油がジュウジュウと動いている。

早速一口かじるとジュワッと肉汁が出て口いっぱいに広がり、頬が落ちそうになほどに美味しく、幸せな気持ちになった。

男性たちの言う通りだ。すごく素朴なのにこんなに美味しいなんて!と感激しながら完食し、そろそろ次なるお店に行きましょうと席を立ったリリアンヌに、店員から一枚の紙が渡された。


「お代です」

「ああ、そうですよね」


お水と串焼きで合計二百三十ペクスとあり、支払おうとするが・・・。


「あら??」


血色のよかった顔が、サーっと青ざめる。

いつも城出するときに愛用している巾着袋。

今日も腰につけてるはずがどこにもないのだ。


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